先日紹介した,ヤビツwithペダモニの続編。
3つの検証項目(FTPの計測,簡易パワー計算の精度,一定パワー走行)のうちの2つ目,「簡易パワー計算の精度」について,検証してみましょう。
(おさらい)簡易パワー計算とは?
ここで言う「簡易パワー計算」とは,2012年4月,我がフォトポタ研究所が世界に先駆けて開発した,標高データとラップタイムから平均パワーを計算してくれる,エクセルシートのことです。
「世界に先駆けて開発!」と偉そうに書いていますが,実は,ふじいのりあき氏の名著『ロードバイクの科学』に載っていた計算方法を,エクセルシートに落とし込んだだけだったりしますが,それは秘密です。
詳細な計算方法は,過去記事(または『ロードバイクの科学』)に譲りますが,以下の3つの抵抗から,その時のパワーを計算するものです。
- 空気抵抗(速度,ライディングフォームによる)
- 転がり抵抗(重量,タイヤ空気圧による)
- 登坂抵抗(勾配,重量による)
1kmごとのラップタイムと標高差をエクセル表に入力すれば,区間の平均パワーを算出・グラフ化してくれます。
実際に使ってみると,標高差の誤差が大きい(1kmではそんなに上昇しないため)ことに気が付き,2015年5月には,過去16回分のヤビツ登坂データ(の標高差)を平均して使う,改良を施しました。
最初の開発から4年,無数のヤビツアタックと多数のスバルラインアタックにおいてデータを取り,家に帰ってからグラフ化してはニヤニヤしたらい,号泣したりしてきました。
典型的な号泣パターン(笑) 序盤で猛ダッシュしたものの,後半に向けて猛ダウンしていく,いつものヤビツ。
簡易パワー計算最大の欠点は,その精度がまったくわからないところでした。
ふじい氏の計算手法に問題なくても,おいらのヘボエクセル表にミスがあったら,とんでもない値を計算してしまうことになります。
しかし,真値を計測すべきパワーメーターを持っていなかったので,そのミスに永久に気が付かない可能性がありました。
ダウンロードして活用していただいた方から,「便利な計算シートありがとう!」「この表・グラフを頼りに頑張ります!」みたいなコメントやお礼をいただいていたのですが,その都度,「合ってないかもしれないけど・・・」と弱いパワーで言い訳していました。
そこで,今回は史上初! 簡易計算シートとペダリングモニターの両者の比較をするために,老体に鞭打ってヤビツに出向き,データを拾ってきたのでした。
【検証項目2】簡易パワー計算の精度やいかに!?
1kmごとのラップデータを入力して簡易計算した結果と,ペダリングモニターの計測結果は,以下のようになりました。
おぉぉぉ~,簡易計算とペダモニの値はほぼ一致している~!!
グラフの赤い線が簡易パワー計算,青い線がペダリングモニターの計測結果です。
どうでしょう?
意外なほど,簡易パワー計算とペダリングモニターの差は小さいことが分かりました!
前回記事でも書いた通り,この日は向かい風がかなり強かったので,さえぎるモノがない序盤は向かい風と戦うことになり,パワーは大きめになったと思われます。
簡易計算は無風状態を前提に計算しているので,序盤はその分の差が出てしまい,4km以降の森林区間に入ると,風の影響がなくなって,両者の値はほぼ一致するようになっと推測できます。
意外といけるぞ,簡易パワー計算! しかし・・・?
比較の通り,簡易パワー計算の精度は予想以上に高いことが分かりました。
家に帰って,その日の走りやペース配分を分析するには十分に役立つと思われます。
もうちっと工夫すれば,クリティカルパワーやFTPだって計算できそうです(^^)
---
ただ,簡易計算は事後にしか分からないという根本的な課題があります。
走りながらタブレットやスマホを使って,エクセル表に入力し続ければ理論的にはできそうですが,現実にはまず無理でしょう(←まず死にます)
また,グラフの緑線は心拍の推移を表しているのですが,青い線(ペダモニのパワー)と見比べると,心拍とパワーにはあまり相関が無いことが分かります。
心拍数もプロットしてみると,パワー変動と連動していないことが(残念ながら)分かります。
特に後半は心拍はほぼ一定(180~183bpm)なのに,パワーは徐々に下がっていっています(210→180W)。
たぶん,パワーを変えなくても心拍が上がっていってしまう,心拍数ドリフト(Cardiac Drift)なのかと思いますが,いずれにせよ,心拍だけを見ていては,肝心なパワーが落ちていっていることに気が付きにくいです。
心拍数ドリフトについては,パワーメーターを使って,実際にどれだけ起きているかを計測する手法もあるので,冬のトレーニング時には測ってみようと思っています(ドリフトが起きている=練習不足らしいですが・・・)
まだまだ使い始めたばかりで,1割も理解していないパワーメーター・パワートレーニングですが,だんだん,パワーメーターを使う意義が分かってきつつあります。
次回は,3番目の検証項目,「一定パワーで走れるものなのか」を紹介してみたいと思います。
つづく(^^)
(おまけ)
記事を書くのに1週間もかかってしまったので,もう1回分,ヤビツデータを入手できました(今週も行ってきたのです)
今週もヤビツに行ったので,同様に比較してみました(^^)
今週はほとんど無風状態だったせいか,簡易計算とペダモニの計測結果は,ほぼ一致しています(^^)
久しぶりに,雲一つない(あるけど),素晴らしい快晴ヤビツでした。
SONY DSC-RX100m2 + Carl Zeiss Vario Sonnar T* 10-37mm F1.8-4.9
それにしても,ふじいのりあきさん,本当にすごいです!!
ちなみに,この2回目のデータ取りのタイムは46分。ど~したもんだか(笑)
はじめまして。
ガーミンEDGE510のUSB端子がダメになってきつつあり、修理した記事があったので拝見していましたら、ロードバイク乗りの方だったとは。
計算でパワーを出せるなんてすごいですね。
しかもその精度たるや。
今度、自分も比べてみたいと思います。
さて、ガーミン。
1000円かからずに治るなら挑戦すべきでしょうか…