初めて角田光代さんの小説を読みました。前々から気にはなっていたのですが,まずは直木賞受賞作の『対岸の彼女』から。
物語は,現在(小夜子と葵),過去(葵とナナコ)の二つが一章ごとに書かれていきます。
子どもが3歳になって,近所の公園に「公園デビュー」したけれど,なかなか周りのお母さん達にとけ込めず,「公園ジプシー」(そんな言葉があるんだ!)となっていた主人公の小夜子。その小夜子が,停滞した生活サイクルから抜け出すため,明るい女性起業家,葵が経営する会社で働き始める「現在」から物語は始まります。
しかし,自由奔放に見える葵も,「過去」には小夜子同様,中学時代にはいじめに遭い田舎の女子校に転校していたのです。田舎の女子校は,典型的な女の子どうしの付き合いばかり。つまり,本当に仲がよいわけではなく,友達の輪に入ること,そのグループに入っていることが大事な友達関係。
しかし,そんな女子校であっても,どこのグループにも入らず自由に生きるナナコという女の子がいた。仮に,他の連中に無視されても,いじめを受けてスカートを着られたとしても,「そんなのはちっとも怖くない。私の本当に大事なものは,そんなところにはない」,と言い切るナナコ。そんなナナコに惹かれていく葵。