いつものように、脳科学の本を。
私たちは、自分のことをすべて把握していて、行動や判断を自分の「意識」でやっていると思っていますが、実際には、大部分の仕事は無意識のうちにこなされていて、ごくごくたまに意識が介在するだけ、というのが脳の姿であることを、ほぼ1冊丸ごとかけて説明してくれます。
同じような、「意識」や「自由意志」に関する話は、M.Gazzanigaの『<わたし>はどこにあるのか』や、池田裕二『進化し過ぎた脳』などでも読んでいました(Gazzanigaの方は本書にも登場します)。
視覚などの認識系や犯罪者更生など話は多岐にわたるのですが、自転車乗り的には、「意識しているうちはまだ駄目だ」というのが面白かったです。
野球が例に挙げられているのですが、ピッチャーが球を投げてからバッターに届くまでは0.4秒程度であり、この間に、ボールから反射する光信号を網膜回路で受信し、後頭部の視覚系で像を作り上げ、その情報を運動野まで伝え、バットを適切に振るための筋肉の収縮を調整する信号をカラダ内の各所へ発信します。
でも、外界の変化を「意識」として認識するのには、最速でも0.5秒はかかるので、意識が介在する余地はありません。
一連の処理を無意識下で処理できるようになるまで徹底的に練習し、脳のハードウェアに焼き付けて初めて、0.4秒以下という超高速プレイができるようになるとのこと。
自転車のペダリングでも、「引き足を意識して」とか「丸く回せるように意識して」とか言っている間は、たぶん、できないと思われます。
本書ではこう書かれています。
アスリートがミスをすると、コーチはたいてい叫ぶ。「よく考えろ!」。皮肉なことに、プロのアスリートの目標は考えないことだ。目指すべきは、熱戦中に適切な作戦行動を意識の干渉なしに自動的に繰り出せるよう、何千時間という訓練を行なうことだ。
デイヴィッド イーグルマン. あなたの知らない脳 意識は傍観者である (ハヤカワ文庫NF) (Kindle の位置No.1362-1365). 株式会社 早川書房. Kindle 版.
なるほどな~、です(^^)