また角田光代の本を読みました。今度は,ちょっと「子供向きか?」とう感じの『キッドナップツアー』。だって,表紙はこんな感じだし,字は大きいし,ちょくちょく挿絵は入っているし・・・。
でも,そんな簡単なお話ではありません。子を持つ親(親を持つ子にも)にとって,おもしろく,また考えさせられる本でした。
見た目やタイトルとは違って,子どもとの接し方,子どもから見た親や社会の仕組み,他者との関わり方がメインテーマだと思います。
日々,子どもと一緒にお出かけしたり,食事をしたり,オモチャを買い与えたり,公園で遊んだりしている我が家ですが,子どもから見た僕らはどうなんだろう?ということを思ってしまいました。
主人公は,小学5年生の女の子「ハル」。ただし,ハルが女の子であることにたいした意味は与えられなく,どちらかと言えば,「この年代の子ども」という位置づけかと思います。ハルの両親は2ヶ月前に離婚したわけですが,父親が不意に現れ,ハルを誘拐していってしまうところから物語は始まります。
父親は母親に対してなんらかの要求を電話で告げながら,ハルを人質に逃避行を続けます。「逃避行」と言っても,もともと親子なので,海や山,ホテルや民宿,様々な経験をしながらのロードムービーのような展開になっています。
そうしていく中で,楽しい思いをしたり,つらい思いをしたりしながらハルが成長していきます。父親はドジで無計画なダメおやじなんですが,やっぱり,最後までダメおやじです。でも,最初は毛嫌いしたりバカにしていたハルも,理由はわからないけど,逃避行を続けていきたくなります。
でも,だからといって「父親の魅力に気がついて和解し,そして母親とも・・・」という単純なハッピーエンドを迎えるわけではありません。この小説では,書かれていないことが沢山あり,読者にかなりの想像力を期待しています。
民宿を抜け出し,二人で夜の海に仰向けに浮かび,あらゆる人間関係から離れたハルが「うっとりするような気持ちの良さ」を感じるシーンがあります。だけど,それでも,人は人と結び会い,そして適度な距離を保って生きていかなければならない。おいらの想像力では,ハルはこれを学び,少しだけ成長したのかなぁ~,と思いました。
角田光代。「おもしろい小説を書く人だなぁ~」と思いつつ,「読者はほとんど女性だろうなぁ」ということにも気がつき,数少ない(?)男性読者として,今後も彼女の著作を読んでみようかな,と思いました。
それでは,お休みなさい~。