とてもスピード感のある小説でした。
変な言い方ですが,「映像化しやすい小説」という気がしました。
様々な思いを持った人達が,別々に,しかし同じ場所を目指して車を走らせる。ラスト付近のシーンでは,誰か(一応,ネタばれになっちゃうので)が銃を撃ち,銃弾が風を切り,叫び声があがり,その隙間をついて・・・,という風に映画のスローモーションのように場面が進んでいきます。
読んでいたのは,電車に乗っていてちょうど終点だったのですが,降りられませんでした(笑)。
本当,映画のようなスピード感と迫力がある小説でした。
恋人に裏切られ,散弾銃を持って披露宴に現れた女性。
物語は,いきなり「散弾銃」という物騒なキーワードから始まります。
そして,さまざまな人の「復讐」という憎しみの象徴として散弾銃が効果的に使われています。
恋人の裏切りへの復讐,別れた妻子を無惨に殺された男の復讐。
ある意味,この物語の主人公は,人間の持つ憎しみや,そこから生まれる新たな悲しみといったものかもしれません。
最近,読んだ『クロスファイア』にも通じるものもあります。
あの小説では,果たされなかった悔しさや復讐を「私刑」という形で裁くこと,それを可能にする能力をもった者の悲しみを描いていました。
この小説の魅力は,そうした,人間の持つ闇の部分や復讐はまた悲劇を生んでしまうという悲しさを描きながらも,ものすごいスピード感で一気に読ませてしまうところだと思います。
ただ,そのスピードだけに,主要登場人物以外の描写がちょっといい加減なところも多々あり,残念ではありましたが・・・
「どちらがよかった?」と聞かれれば,やはり,『クロスファイア』ですなぁ。
明日は「宮部みゆき強化月間」のまとめの予定です(ただ単に,書くのが面倒になったという噂もある・・・)
おしまい。
【追伸】
今月は「瀬尾まいこ強化月間」。『図書館の神様』を読みつつ,『スナーク狩り』を思い出しながら書くのはしんどいなり。ジャンルが違いすぎる・・・