いつもいつも,遅れがちになる「月間読書記録」ですが,今月もブッチギリで遅れています。
ここのところ,数ヶ月にわたって「伊坂幸太郎強化月間」が続いていましたが,ようやく,12冊目の『死神の精度』でいったん休止することにしました。
まだ大量に買い置きしてあるのですが,さすがに少し飽きてきてしまい(^^;),写真や三浦しをんなどを読んでいました。
久しぶりの,月間読書記録(昨年12月~1月)です。
著者 | プチ感想 |
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『天国旅行』 三浦しをん |
自殺や心中といった,自ら選ぶ死を描いた短編集。詳細は後半で! |
『あるキング』 伊坂幸太郎 |
周囲を圧倒する,野球の天才の生涯を描いたストーリー。 幼少時代から,その圧倒的な強さゆえに孤独を深めていく主人公(なんせ,全打席ホームランじゃねぇ・・・)。主人公を「王」として位置づけ,王たるものの孤独や使命を描いているような,そうでないような,良く分からんです(笑) 新しい領域を切り開こうとしているのだと思うのですが,多くの伏線や仕掛けも何の種明かしもなくあっさり終わってしまい,マンガ週刊誌でありがちな「戦いはまだ始まったばかりだ。おわり。」的な消化不良になるかも・・・。 |
『死神の精度』 伊坂幸太郎 |
主人公は死神。別の組織(?)の決定で死ぬことが定められている人間について,1週間の査定を行って「死ぬべきか」「そうではないか」を判定する役という設定。 6つの短編が収められているのですが,う~む,どうもどれも中途半端というか,なんともかんとも。今までの小説のように,徹底的に人間的な感情を排した,ドライな話ばかり読んできてたので,死に行く人間とそれを見つめる死神という,ウェットさについて行きにくい。 著者もそう思っているのか,基本的にドライな死神(人間が死ぬことをなんとも思っていない)に,感情を持たせたり,持たせなかったり,どうも中途半端でした。また,短編に収めるためか,「こういうことになっている」「こういう条件では見えないのだ」みたいな,都合の良い設定が多くあるのも気になりました。 完読せず,半分くらいで止まったままです・・・。 |
『陽気なギャングの日常と襲撃』 伊坂幸太郎 |
とっても面白かった『陽気なギャングが地球を回す』の続編。しかし,続編の宿命か,やっぱり前作を上回ることはありませんでした。 登場人物達がそろって活動(=銀行強盗なんだけど)する話の前に,一人ひとりの日常を長~~~く書いているのですが,いくらなんでも長過ぎて,前作の特徴でもあった冒頭のスピード感が感じられません。 登場人物たちのキャラクターはとても面白いので,第三作目(あるとウレシイ)ではスピード感を取り戻してほしい~! |
『誰も伝えなかった ランドスケープ・フォトの極意』 相原正明 |
以前も紹介していますが,写真・カメラの本には珍しく,技術的なことには一切触れず,ひたすら精神論に徹しています。 正直言って,10年近く写真・カメラを趣味にしていると,たいていの入門書に書いてあることは「ふ~ん,どっかで見たなぁ」的なものばかりで,目新しいことが少なくなってきます。ここから先,どれだけ頑張って自分の世界を切り開いていけるかで,プロやハイアマチュア,はたまた,どこかのブログ主のような「下手の横好き」,という分かれ目なのでしょう。 精神論がガンガン語られる本です。他の本で「カメラを大切にして甘やかしたりするな!」なんて文章,見たことがありません(笑)本書は,おいらのような「カメラ・写真を5年以上やっているけど,なんかマンネリだよな・・・」と思っている人には,ガツ~ンと痛いゲンコツを食らわしてくれる,面白いカメラ・写真本です。 |
『ビューティフル アウトフォーカス』 玄光社ムック |
フォトポタ日記を長年読まれている方にはバレてしまっているかもしれませんが,おいらは大の「ボケ」好きです。別に「さっき何を食べたか分からない状態」が好きなのではなく,写真での,ぼや~んとした背景のことです。 一眼レフを使い始めると,誰もが一度はその「ボケ」の美しさにハマるといわれますが,おいらの場合,ずっと抜け出せなくなっています。一般的には,ボケばかりとっているボケ野郎はダメカメラマンと評されるのですが,本書は,もう,思い切ってボケ大好き!を前面にカミングアウトした本です。 どうやったらボケるか,美しいボケはどう作る,ボケないときはどうする,もう,ボケだらけです。いかんなぁ,はやくボケワールドから抜け出さなきゃと思っているのに・・・。 |
『カメラマガジン』 エイ出版 |
技術的なことや新製品紹介などは少ないのですが,紙面が格好良くてなんとなく買っているカメラ雑誌。 写真がきれいなだけで,中身が薄いような気もしないではないのですが,それでもいいんです。見ていて楽しいから(^^) エイ出版ってのは,変な本ばかり出しますよねぇ・・・。それにしても,「カメラマガジン」なんていうベタなネーミングが,今までどこにも使われていなかったのが,なぞです・・・ |
三浦しをん 『天国旅行』
久しぶりに,三浦しをんを読みましたが,やっぱり面白いですなぁ。
伊坂幸太郎をいったん休止した理由のひとつには,登場人物がちょっと人間離れしているというか(そこがまた魅力でもあるのですが),もう少し現実的な,血の通った話を読みたくなってきたというのがあります。
それで,三浦しをんでいいのか?という話もありますが,今回読んだ『天国旅行』はなかなか読み応えがありました。
三浦しをんの小説には,『まほろ駅前番外地』『舟を編む』『風が強く吹いている』『神去なあなあ日常』などのマンガっぽい小説シリーズと,『光』『きみはポラリス』『むかしのはなし』のようなシリアスシリーズ(?)があります。
世の中的には前車前者がバカ売れ状態ですが,なかなかどうして,校舎も真剣に面白いのです(←どうなってんだ,MS-IME!)
で,『天国旅行』。
死,それも,自殺や心中といった,自ら選ぶ死を描いた短編集です。
テーマが「死」というだけあって,重い内容を予想していたのですが,読後は決して沈んだ感じにはなりませんでした。
極端にどよ~んとするわけでもなく,かといって,「生きるって素晴らしい,サイコ~!」と叫ぶような内容でもありません(まぁ,あんまりないですよね)。
7つの短編を読みきってみると,「生」と「死」は,全く違う隔絶されたものというよりも,薄い壁や膜で仕切られていて,そのどちら側にも存在しうるような,そんな気がしてきます。
しかし,生と死がとなりあわせだとしても,喜びや悲しみ,苦しみ,救済や愛や憎悪も,すべて生きていてからこそであり,死は死以外の何物でもないことにも気が付きます。
死に思いをはせつつ,現実の生にも目をむけ,やっぱり,生きることの楽しさや苦しさにあらためて見つめ合う力を与えてくれる短編集です。
ひとつの短編のエンディングがたまらなく気に入ってしまいました。
・・・,そうなってみてはじめて,確信を持って言える。きみが大切だ。
好きだとか愛しているとかいった甘っちょろい言葉を超え,きみの愚痴や小言も含めて君を大切に思う。
きみと出会い,きみと生きたからこそ,私はこの世に生を受ける意味と感情のすべてを味わい,知ることができたのだ。
きみにとっての私も,そういう存在であったのならばいいのだが。
太陽のように白いボールは,きみから放たれた輝く矢となって,いまも深々と私の胸に刺さったままだ。
焼いたらきっと,あの日私が目にしたままの姿で恋の矢が出てくるだろうから,お骨のあいだを探してごらん。
砕いてきれいな首飾りにしても,夜空へ放って星を増やしても,失われたきみの歯のかわりに歯茎に埋め込んでも,好きに使ってかまわない。
私のすべてはきみのものだ。きみとすごした長い年月も,私の生も死も,すべて。
なんでしょう,この格好いいエンディングは。
この一説だけを抜き出しても,詩集にできそうなくらい,ステキです。
そして,文庫本に限ってですが,末尾の「解説」がすごくいいというか,本文並みに読み応えがあるんです。
一体誰が書いているんだ?と思ったら,まさかの角田光代。
一冊で二度楽しめます(^^)