どうして,こんなに一気に・・・(良く見ると,モダンタイムス重複してるし)
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8
いつも,やらなきゃいかんなぁ,と思いながらなかなか更新できない「月間読書記録」。
今やります,今やりますと,ヤルヤル詐欺を続けた結果,なんと3か月分も溜め込んでしまいました。
まぁ,あまり人気の無いコーナーですし,ついつい放ったらかしになっちゃうんですよねぇ・・・(^^;)
2013年9~11月の読書記録
この3ヶ月の読書内容は,かなり偏っています・・・。
『フィッシュストーリー』に始まり,『陽気なギャングが地球を回す』まで連続10冊,ひたすら井坂幸太郎の小説ばかり読んでいました。
イサカバカです。
著者 | プチ感想 |
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『フィッシュストーリー』 伊坂 幸太郎 |
『動物園のエンジン』『サクリファイス』『フィッシュストーリー』『ポテチ』の4話からなる短編集(中編かも)。正直,前半2編はそんなに面白いとは思わなかったのだけど,売れないバンドが思いつき(ヤケ?)でアルバム中に入れた空白の1分が,40年後に世界を救うことにつながっていくという「フィッシュストーリー』はなかなか面白かった。 しかし,親子のつながりを描いた『ポテチ』がなんといっても最高に良かったです。この1編だけが書き下ろしということなのですが,そのせいか,序盤から多数の伏線が仕込まれていて,ラスト数ページに一気に盛り上がりを見せ,さらりと終わっていきます。親子の「血のつながり」という,少し重いテーマを描きつつ,決して暗くなることなくホロリとさせる,いい中編でした。 |
『オーデュボンの祈り』 伊坂 幸太郎 |
伊坂幸太郎のデビュー作らしいです。仙台沖に浮かぶ,150年も鎖国を続けているという謎の島で繰り広げられるミステリー。舞台の設定自体が謎めいてますが,殺人事件の被害者が言葉をしゃべり,未来を予言することができる「カカシ」というとこともかなりシュールです。 この謎の島に流れ着いた主人公(コンビに強盗未遂)が,謎の島民達(体重300kgの女,嘘しか言わない男,なぜか本土と行き来する男,悪事を働くものを問答無用で殺す男等)と触れ合っていく中で,人間にとって「悪」とはなんなのか?ということに迫っていくお話(だと思う)。少し(かなり?)非現実的でシュールな設定なのですが,その「現実離れ度合い」が上手く,グイグイ引き込まれてきます。ただ,その後の作品群に比べると,物語構成が多少単調かな~,なんて思いますが,なんせデビュー作ですから必読です。 |
『重力ピエロ』 伊坂 幸太郎 |
『ポテチ』のテーマでもあった,「親子の血のつながり」。長編小説『重力ピエロ』では,これをより深く描いています。 主人公の「私」には,「春」という名前の弟が居るのだけど,春は母親がレイプされたことで生まれてきた子供。つまり,私とは半分しか血がつながってなく,私の父とは全く血のつながりが無い。私も春もレイプ犯を憎みつつも,それがなければ,弟,自分が存在し得なかったいうジレンマに悩む。 ものすごく重いテーマなのですが,父と母がともに素晴らしく,「なぜレイプ犯の子供を(堕胎せずに)生んだのか」という周囲の好奇の目に対し,毅然,というか,どこに問題がある?と立ち向かいます。そして,最後の最後には,少しスカッとする,初期伊坂幸太郎の「勧善懲悪」ブリが待っています。 |
『モダンタイムス』 伊坂 幸太郎 |
「浮気」について狂人的に厳しい妻を持つ主人公が,妻に頼まれた拷問屋(?)に浮気の罪を白状するよう拷問されるところから物語が始まります。 ソフトウェア会社に勤める主人公が,客先のシステム改修に赴くのですが,そのシステムや依頼先は謎に包まれていて,それを調べようとした者たちが失踪したり,視力を奪われたり,無実の罪を着せられたりするなど,ひどい目に遭います。そのシステムに潜むキーワードを「検索」することで,その検索を行った者が興味を抱いていると国家に判断されて・・・。 という,なんだか怖いお話ですが,現実世界でも,GoogleやYahoo!で検索を行うことは,イコール,個人の趣味・趣向をかなりオープンにしてしまっているということも,改めて思い知らされます。この物語に出てくる,超怖い妻,佳代子さんがかなり好きです(ドMか?) |
『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂 幸太郎 |
4人の男女が銀行強盗で4000万円を奪ったものの,逃走中に別の銀行強盗に遭遇し,せっかく盗んだ4000万円を丸ごと奪われてしまい,そのリベンジを描いた小説。と書くと,なんだが血で血を洗う,ハードな小説を想像してしまいますが,いつものように,超クールな主人公たちですから,「盗られたね」「取り返したほうが良くないか」「強盗から強盗するのは良くないことを教えないといけないな」という感じで,笑えてしまいます。 この小説の魅力は,主人公たちの冷静で緻密な銀行強盗の手法や美学にあると思います。「殺されなかったら金を出せ!」的なところはまったくなく,非常ボタンを押させないやり方や,銀行内で演説することでそちらの記憶が残ってしまうこと,綿密な逃走経路下調べなどなど,決して人を傷つけない方法で,さらりと盗んでしまう(まぁ,重大犯罪なんだけど)ところが,格好いいのです。 他の伊坂作品と比べても,格好いい「名言」が多いのも特徴で,とにかく楽しい小説でした。 |
『ラッシュライフ』 伊坂 幸太郎 |
なんだか,沢山のお話が輻輳する小説。他作品の登場人物もあちこちに出てきます。でも,もう,忘れちゃった(笑) |
『魔王』 伊坂 幸太郎 |
書くの疲れてきたよ・・・。 |
『チルドレン』 伊坂 幸太郎 |
面白かったです。詳細はAmazonでも見てください。 |
『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂 幸太郎 |
うろ覚えになってきた・・・。 |
後半,相当投げやりになっていますが,とにかく,紹介をためすぎました。3日でほとんど忘れてしまう人なので,題名を見ても,ちっともストーリーが思い出せなくて・・・。
きっかけは,8月末に,短編集である『フィッシュストーリー』を読み,その中の『ポテチ』ですっかりハマってしまいました。その後は怒涛の10連続イサカになってしまいました。
8月以前,ずっと浅田次郎だけを読んでいたのだから,なんとも極端なんですよね・・・。
なにがそんなにハマったの?
今まで,伊坂幸太郎と言えば,TVで見た『ゴールデンスランバー』だけでした。
とても楽しいドタバタ劇でしたが,小説を読み始めてみると,だいぶ感じが違いました。
今のところ,初期の作品ばかり10作読んだのですが,こんなところにハマっています。
クール・冷静な登場人物たち
まず,主人公をはじめ,登場人物のほとんどがとてもクール・冷静・客観的で,どんな困難なとき(例えば拷問されるとき)でも,気の利いたジョークを静かにしゃべったりします。
このクールさは,かなり独特で,好き嫌いはあるでしょうが,おいらはすっかりハマってしまいました。
普通,拳銃を向けられたり,殴られたり,そういう状況ではパニックになると思うのですが,多くの登場人物たちは「イヤだな。参ったな・・・」程度の薄いリアクション。
おいらも,家族全員から「リアクションが無さ過ぎる!」と言われることが多いので,それで共感しているのかもしれません。かなり大きな怪我をしても,「すごく痛い。血が出てるし,イヤだな・・・」程度のリアクションですもん,おいらも(笑)
『陽気なギャングが地球を回す』の登場人物たち(雪子を除く),『モダンタイムス』の主人公などが顕著で,とても気に入っています。
勧善懲悪,さわやかストーリー(^^)
トリックや伏線などが複雑な物語だったとしても,最終的には「勧善懲悪」な物語が大多数なので,読み終わった後には一種の爽快感があります。
今年,大流行したらしい(見てないのよ・・・)『半沢直樹』のように熱すぎる復讐ではなく,非常に低いトーンで,静かに,でも,確実に悪を懲らしめる。それも,一瞬で。
最近の著作では,勧善懲悪スタイルから変わりつつあるそうですが,そちらもまた読んでみたいところです。
超かっこいい女性達
いくつかの作品で,超かっこいい女性が登場します。
最強は,『モダンタイムス』の佳代子さんで,素手で敵をなぎ倒して主人公を救います。その強さは,ストリートファイター(古?)に出ても通用しそうな格好良さです。
それ以外にも,『陽気なギャングが地球を回す』の雪子さん,『アヒルと鴨のコインロッカー』の麗子さんも,それぞれ,正確な体内時計や冷静な判断・行動など,とても格好いい女性です。
また,『フィッシュストーリー』に収められた『ポテチ』に登場する若葉さんも,特技はないのですが,たまに出る口癖「ぶっとばすよ」が最高です。
ビルから飛び降り自殺しようとする若葉さんと,たまたま知ってしまった主人公の今村(=泥棒)のやり取りが笑えます。
「飛び降りたら大丈夫,と思っていると大間違いだよ」今村はそこで不適な微笑を浮かべる。
「大丈夫,の意味合いが良く分からないけど」
「俺の親分が,このマンションの下で待ち構えているんだ」
「待ち構えてるってどういうこと」女はフェンスの下を確かめるように背伸びをした。
「君が落ちたら,キャッチするんだよ。残念だけど」
女は呆然とし,目を大きく開けた。「キャッチ?十階から落ちた人間を? その人,スーパーマンか何か?」
「スーパーマン?」今村は噴き出した。「子供じゃないんだから,何をバカなことを言ってるんだよ。俺の親分は普通の中年の男だって」
「落ちたわたしを,その普通の中年男がキャッチするつもりなの?」女は目を白黒させた。「無事なわけないじゃん」
「大丈夫」
「適当に言わないでよ。何で,わたしが最後の最後に,見も知らない中年男にぶつかって死なないといけないわけ? ぶっとばすよ」
「親分は高校球児だったんだって。しかもポジション,外野だし」
「だから何?」
「フライを捕るのは得意中の得意なんだって。小さいボールを捕るのに比べたら,君を捕るなんてね,余裕だよ余裕。余裕過ぎるよ」
「それとこれとはぜんぜん,違う」
「たいだい補欠だったらしいけど」
「補欠なのかよ!」女がすぐさま怒鳴って,その場にへたり込んだ。「もうどうでもいいや」
こんな,一見粗野な性格の若葉さんですが,物語の最後の最後の最後の一言で,泣けるセリフを一言だけいいます。
ネタバレなのでダメだけど,いいなぁ,若葉さん。
登場人物たちの格好いい名言
伊坂作品には,かなりの高頻度で,登場人物たちの格好いい「名言」が登場します。
あまりに多いので,なかなか覚え切れませんが,コレを読むだけでも楽しくなります。
- 誰だって初参加なんだ。人生にプロフェッショナルがいるわけがない。まあ、時には自分が人生のプロであるかのような知った顔をした奴もいるがね、とにかく実際には全員がアマチュアで、新人だ。(ラッシュライフ)
- 誰だって自分だけはオリジナルな人間だと思っているんだよ。誰かに似ているなんて言われるのはまっぴらなんだ。俺は、ジョン・レノンに似ていると言われるのだって我慢できないね(チルドレン)
- 黄金時代が現代であったためしはない。いつだって黄金時代は、その時代には気がつかず、後になってはじめて、「あの時は良かったな」と分かるもの、そういう意味なのだろう(チルドレン)
- 俺は生まれてこの方、ダサかったことなんて一度もないんだよ(チルドレン)
- 大事なルールほど、法律では決まってないのよ。困った人に手を貸しなさい、とかね。(モダンタイムス)
- 世の中で一番贅沢な娯楽は誰かを赦すことだ(魔王)
- 人間は後悔をする動物だが、改心はしない。繰り返すんだよ、馬鹿なことを。『歴史は繰り返す』というのは、それの言いわけだ。(陽気なギャングが地球を回す)
- 弱肉強食とほざいているおまえの友達は,自分より強い奴に殺されることを良しとしているのか?(陽気なギャングが地球を回す)
揮発性メモリである,おいらの脳からはほとんど抜け落ちていってしまい,書き写したのもコレくらいしかないのですが,この何倍もあったはずです。
今後の予定
今のところ,お気に入りベスト3は以下の作品。
- ポテチ(フィッシュストーリー収)
- 陽気なギャングが地球を回す
- 重力ピエロ
実はまだまだ山のように未読作品が残されているという,幸せ状態ですので,まだ当面は伊坂本ばかり読んでいそうです。
三浦しをんとかも溜まってきているだけどさ・・・。
トラブルが多くて現実逃避中の,とある管理職の机。本文とは関係ありません(笑)
SONY DSC-RX100 + Carl Zeiss Vario Sonnar T* 10-37mm F1.8-4.9