例によって,一冊読んだら止まらない浅田次郎。
前々から,読もう,読もうと思っていた『天国までの百マイル』を読み終わりました。
このおっちゃん(浅田次郎のことね,念のため)の小説は,「こてこて」の浪花節のように思えちゃうんだけど,実は,本当に,こてこての人情にあふれた小説ばかりです。
そして,この「こてこてさ」がたまらなく,一度読み始めると止まらなく,一週間で3冊も読んでしまいました・・・
バブル期に不動産業で成功した男が,バブルの終焉と共にどん底に落ち,怠惰で無気力な日々を送っているところから物語は始まります。
そんな,くすぶり男が,心臓病を抱えて有名病院でもさじを投げられてしまった母を,たった一人で100マイル離れた,どんな心臓病でも治せるという奇跡の病院に連れて行こうとする・・・
主人公は4人兄弟の末っ子。他の3人の兄弟は,それぞれ幸せな家庭,社会的な地位を得ていて,貧乏で悲惨(と主人公も最初は思っていた)な子供時代につながる母には関わりたくない。そこで,主人公は「おまえらには絶対に頼らない,俺一人で,一番大切な母を病院に連れて行く」ことを決意します。
でも,その過程で,「俺一人で」と思っていたことは,間違いであることに気が付きます。
病院内での力関係に恐れながらも,できる限りの誠意で母に治療をする医師,本当に自分を愛し,自分の幸せを願ってくれるデブのホステス,離婚した元妻,,,。
自分自身も,バブル絶好調の時には,全く省みなかった母や人の情け。どん底に落ちて,貧乏になって初めて分かる親の愛,幸せの意味・・・
心にしみる,良い小説だった。
やっぱり,こてこての浪花節っぽいけど(本人は東京生まれなんだけどな),「浪花節で何が悪い!」と開き直れます。「お涙ちょうだいの話だ」と言われても結構,大泣きしてやる!
クールなのはかっこいいことなのかもしれない。でも,こんなに世の中全部がクール(というより,殺伐か?)としている中,こんなに人情にあふれた話を読めるのは幸せだ。携帯か漫画ばかりの満員電車で,浅田次郎読んで泣いてるなんて,素晴らしいじゃないか~!
と,妙に熱くなって浅田次郎讃歌をしてみました。
熱くなりすぎたので,今日からは,北村薫の「覆面作家シリーズ」を,のほほ~んと読んでいます。こちらは,北村薫にしては珍しく,赤川次郎並みの軽~い探偵小説です。いけね,江國香織読みかけだった・・・