先週は,いろいろ読みました。梨木香歩の『西の魔女が死んだ』,横山秀夫『陰の季節』『動機』,エラワン・ウイパー『ジャンボ旅客機99の謎』,レイチェルカーソン『ザ・センス・オブ・ワンダー』,江國香織『泣く大人』。完璧なまでに脈絡のない選書ですが,今日は『西の魔女が死んだ』について。
この本は,近所の小さな本屋さんで平積みになっていて,帯の「読者アンケートNo.1!」につられて思わず買ってしまいました(単純である…)。
この小説で,おいらが気に入ったところは二つ。まずは,自然の美しさと,それに包まれて生きる素朴な暮らしへの憧憬。それと,,,
この小説,「~が死んだ」と,すこし暗い感じがするタイトルですが,実際には,愛に満ちあふれ,自然への畏怖・敬意を思い出させ,自然の一部として生きることのすばらしさを教えてくれる,やさしく,力強い物語でした。タイトルにある「死」ですら忌み嫌うものではなくなってきます。
中学校でのいじめを機に不登校になっていく主人公の「まい」。そこで,療養をかねて,しばらくの間おばあちゃんの家で暮らすことになります。そして様々な事を学んでいくのです。
まずは,そのおばあちゃんの家の周りの自然の美しさに感動します。野山に咲く花,家の畑で取れる野菜,果物。そうして,その自然に合わせた生き方,というか自然の一部として生きてきたおばあちゃん。都会に住む人なら,一度はあこがれる生き方だと思います。まずは,この点でいい話だなぁ,と思いました。
そして,この物語では,このおばあちゃんが無茶苦茶いいんです。もう,どうにもならないくらい。これが,おいらが気に入ってしまった2点目でござる。
山の中で自然とともに暮らしているのですが,なんというか,根を下ろしているというか,自信を持って生きているのです。しゃべり方も,「まい,それは違いますよ。それは,こういう事だと思いますよ」というように優しく,正しく言い聞かせます。
おばあちゃんは魔女の血を引いていて,まいも魔女になるための修行をおばあちゃん指導の元にスタートします。おばあちゃんは,まいに対して「魔女になるための修行」として,まず「自分で物事をきちんと決める」ことを求めます。透視や未来を予言するなどではなく,まずは,自分の考えをきちんと持ち,それに沿って事を決める。これが一番大切なことだと。
もちろん,これは魔女だけではなく,一人前の人間としての修行だったのです。自然の中での優しい生活を通しながらも,こういう,一人前の人間として当然の(でもなかなかできない)ことを一つ一つ教えてくれるのです。
最後には母親が職をやめて,まいと暮らすことになるのですが,そのときに母親が「何が私にとって一番大切かを考えて,職を辞めることにした」と言うと,おばあちゃんは,軽くニヤリとしながら「考えなければ分からなかったんですか?」と,決して嫌みじゃなく,むしろ優しくうけこたえます。
とにかく,このおばあちゃんの魅力のトリコになってしまいました。はぁ…
あとは,まいの周囲の大人達の優しさに感心します。おばあちゃんはもちろん,いい加減そうに見える母親ですら,まいのことを「信頼」しているのです。不登校になった理由を根掘り葉掘り聞いて傷つけるのではなく,「彼女が言うんだから,それ相応の理由があるのだろう」と考えます。
こうすることで,無用な口論や詰問が無くなるだけではなく,まいにとっても考える時間・チャンスを与えることができているのだと思います。こういったところでも勉強になりました。
(追伸)
美しい自然,そしてそれに合わせた生き方。この本を読んで久しぶりに,レイチェルカーソンのセンス・オブ・ワンダーを思い出して読み返してしまいました。併せて読むと良いと思います。