Nikon D70 + 35mmF2D, f2.8+1/60s, ISO=320
おいらの10月は「宮部みゆき強化月間」。
もともと,宮部みゆきの小説は大好きで,昔からたくさん読んでいました。しかし,ここ数年,村上春樹や江國香織なんかにうつつを抜かしている間に,宮部みゆき様は,せっせと大作を書き上げておられたのでありました。
思い立って図書館で借りた『理由』からスタートして,8冊ほどぶっ続けで読みました。久しぶりに読む宮部みゆきの小説は,どれも面白く(except ICO),面白いだけではない切なさが盛り込まれたりして,1ヶ月間,楽しむことができました。
1冊ずつ書いているのが面倒になっちゃったので,KKB始まって以来初の表形式でまとめてみました。(もう,table要素なんて,使い方忘れてました・・・)
書名 | 評価(3星) | 感想 |
---|---|---|
『蒲生邸事件』 蒲生邸事件 |
★★☆ | タイムトラベルによって2・26事件前夜にトリップしてしまった高校生の話。時間を自在に旅する能力を持ちながら,運命には逆うことのできないタイムトラベル能力者の切なさを描きます。それと同時に,歴史は人が作り出すのか,それとも人は運命によって動かされ,その結果が歴史になるのか,という大きなテーマを描いていきます。ちょっと変わった設定の,とても面白く,読み応えのある小説でした。 |
『理由』 |
★☆ | 殺されたのは誰なのか。「一家」4人が高級マンションで殺されたのにもかかわらず,その被害者が誰なのかが分からない。 着想はとても面白いものがあります。しかし,第3者が事件関係者に行うインタビュー形式,という変わった構成が気になってしまいました。推理小説の「推理」の部分が無いので,なんとも歯がゆい感じがしました・・・。 |
『ブレイブ・ストーリー(上下)』 |
★★★ | 純粋にエンターテイメント小説として面白かった。ちまたのロールプレイングゲームとそっくりな気もしますが,小説ではもっともっと主人公の心の中を描くことができます。冒険を通して主人公がどんどん(精神的に)成長していく姿がとても良かった。やはり,宮部みゆきは少年を書くのがとても得意です。 |
『ICO -霧の城-』 |
★ | 同名のロールプレイングゲームにインスパイヤされて書かれた冒険小説。しかし,はずれでした。あまりに主人公の心理描写が多すぎ,ほとんど(というか全く)冒険していないのです。舞台は最初から最後まで全部ひとつの城の中。その中で,主人公イコがグダグダ内省的に考えを巡らせるという物語です。『ブレイブ・ストーリー』の後に期待して読んだだけに,ショック大でした・・・ |
『クロスファイア(上下)』 |
★★★ | パイロキネシス(念力放火能力)を持つOLの活躍と苦悩を描く小説。今回の「宮部みゆき強化月間」では,『ブレイブ・ストーリー』と並んで一番面白かったです。思ったところに火を放つことができる主人公。自分のことを「装填された銃」としてとらえ,「銃であるからには正しいことに使わなければならない」として,社会が裁くことができない悪を焼き払います。しかし,小説の後半では,そのような私刑は許されるのか,正義のための犠牲は許されるのか,といった問いに発展していきます。上下巻がそろって,おもしろさが3倍くらいになる,迫力のある,面白い小説でした。 |
『鳩笛草 ― 燔祭・朽ちてゆくまで』 |
★★☆ | 『クロスファイア』の原作(?)となる『燔祭』をはじめとする3つの短編集。どれも,特殊な「能力」を持つ女性が主人公。『鳩笛草』では,触れた物を通して持ち主の心を読むことのできる刑事,『朽ちてゆくまで』では,近い未来を予測する能力を持つ女性が描かれます。3編に共通するのは,そうした特殊能力を持った主人公達が,その能力を存分に行使しまくるのではなく,むしろ,社会との繋がりを求め,異端者である自分をコントロールしようと努力する姿です。どの短編も心を打つ切なさがある秀作でした。 |
『スナーク狩り』 |
★★☆ | 単純に面白かったです。一連の「能力者」を主人公にした「クロスファイア」や「鳩笛草」などとは異なり,映画のような展開の速さ,はらはらどきどき感,読んで楽しいエンターテイメント小説でした。 |
いやぁ,どれもこれも面白かった(except ICO)。さてと,あと残るは『模倣犯』だけだ。しかし,でかいよ・・・