ヘッド周りでいろいろ起きました(ステム取付ミス編)

【注意】これは,作業ミス。失敗状態のステムです・・・。

【注意】これは,作業ミス。失敗状態のステムです・・・。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D

前回は,ステムの固定ボルト破断事件の顛末を紹介しました。

運用方法のまずさ(ボルト再利用)が主要因と思われるトラブルで,知人の材料工学の専門家の意見を聞きつつ,新品のステンレスボルトに交換することで,とりあえずはステムを復旧させました。

しかし,一連の作業前に,実は小さな,いや,大きな作業ミスを犯していたことが発覚していました。

それが上の写真であり,フォーク大掃除を行う前の595号のステアリング部分を横から見た写真ですが,1点,大きな作業ミスが隠されています(っていうか,思いっきり表面化しています)。

さて,その「大きな作業ミス」とはなんでしょうか・・・?
(気が付いた人は,きっとHEAD FITタイプのLOOK乗りでしょう)

要するにこんなお話です(^^)

  • ヘッドセット(HEAD-FIT)の組み立て時に,スペーサーの入れる順番を間違えた
  • 大事には至らなかったけど,ちゃんと説明書を読んで作業するべし!


最初に「正解」を

文字だけではとても分かりにくいと思いますので,最初に「正解」写真をお見せしましょう。

こちらが正しいステムの状態です。違いは分かりますか・・・?

こちらが正しいステムの状態です。違いは分かりますか・・・?

SONY NEX-5N + E30mm MACRO

違いが分かりましたでしょうか?

富士ヒルクライム(FHC)のスペーサーが,誤=2枚,正=1枚となっていますが,これは特に問題ではありません(見た目が問題だけど・・・)。

2枚の写真をよく見比べると,正の方は,コラムのてっぺん(ステムの上辺)に台形のリングがあることが分かります。

一方,誤の方は,薄い黒い蓋だけが見られます。さらに,よく見ると,台形のリングは,ステムの下側に挿入されています。

そう,この「台形リング」の挿入場所を誤っていたのでした。

上から順にパーツを並べると,こんな感じになります。

  正しい装着 誤った装着
1段目 コラムキャップ コラムキャップ
2段目 台形リング ステム
3段目 ステム FHCヒルスペーサー
4段目 FHCスペーサー FHCヒルスペーサー
5段目 5mmスペーサー 台形リング

間違えるとどうなるの?

台形リングの挿入場所によって,どのような違いがあるのか,写真で見てみましょう。

正しい状況(ステムの上側に台形リングを挿入)

正しく,ステムの上側に入れた場合,ステムの上辺よりも,少しだけフォークコラムが飛び出します。

こんな風に,ステム上面より,コラムが少し飛び出るのが正しい状況。ステム全体で,コラムをガッチリ掴んでいます。

こんな風に,ステム上面より,コラムが少し飛び出るのが正しい状況。ステム全体で,コラムをガッチリ掴んでいます。

SONY NEX-5N + E30mm MACRO

キャップとステムの隙間を埋めるため,台形のリングをこうやって嵌めます。

キャップとステムの隙間を埋めるため,台形のリングをこうやって嵌めます。

SONY NEX-5N + E30mm MACRO

このままだと,コラムにキャップを嵌めたときに隙間ができて格好悪いので,それを隠すのが「台形リング」のお仕事です。

誤った状況(ステムの下側に台形リングを挿入)

一方,誤って,台形リングをステムの下側に入れた場合。

ステム全体が押し上げられてしまうので,正の場合とは逆に,ステムの上辺よりも少しだけフォークコラムが足りない状態になります。

台形リングをステム下に入れると,こんな風になっちゃいます。コラムの長さが足りなくなっちゃうのです。

台形リングをステム下に入れると,こんな風になっちゃいます。コラムの長さが足りなくなっちゃうのです。

SONY NEX-5N + E30mm MACRO

この状態で,ステムを固定するわけですが,

  • ステムの上側の締め付けが足りなくなる
  • コラムの上端に応力が集中する(かもしれない)

という問題がおこりそうです。

アヘッドだと,普通,こういう状態で固定しているような気もしないではないですが,HEAD FITではステム全域でがっちりとコラムを締め付けるように工夫されています。

また,コラム内部にアンカーを打ち込む必要が無いので,写真のとおり,コラムを分厚く作ることができ(いっそ,パイプ形状じゃなくて棒にすることも可能),強度を向上させています。

そんな,LOOK社渾身の力作(?)であるHEAD FITなのに,東洋のド素人自転車バカによって,あっさりとそのメリットを失ってしまっていたのでした。

ごめんなさいです・・・。

マニュアルにはどう書いてあるの?

本来なら,重大な作業ミスとして,いつもの「Shiro家自転車等事故調査委員会」が調査に動き出すところですが,同委員会は,ボルト破断事故にかかりっきりだったため,身内の作業ミスについては,不問に処してくれていました(笑)。

まぁ,これくらいの作業ミスで重大な結果にはならないとは思うのですが,今後の作業ミス防止のためにも,595のフレームマニュアルに,どのように書かれているのかを確認しておきました。

ステムの取り付け図。思いっきり,台形リング(specific race)をつけるように書かれています。

ステムの取り付け図。思いっきり,台形リング(specific race)をつけるように書かれています。

SONY NEX-5N + E30mm MACRO

コラムの分解図。ここでも,specific raceを付ける絵になっています。

コラムの分解図。ここでも,specific raceを付ける絵になっています。

SONY NEX-5N + E30mm MACRO

注意書き。Specific raceを付けないでステムを取り付けるべからず,と書いてあります。

注意書き。Specific raceを付けないでステムを取り付けるべからず,と書いてあります。

SONY NEX-5N + E30mm MACRO

が~ん・・・。

何箇所も,文字で,絵で,写真で,この台形リング(マニュアルでは“specific race”と記載)の必要性と装着位置を解説してくれています。

事故調査委員会の追及を待つことなく,素直に,「作業マニュアル無視」がミスの原因であったことを認めざるを得ません。

作業ミスを犯したのは,先日のフルメンテのときであり,今回のフォーク掃除作業までの約1ヶ月間,気が付かないで乗ってしまっていました。

次回からは,真面目にマニュアルを読んでから作業に着手することを誓うのでありました。いかんな~

【おまけ】このミスが破断ボルトに与えた影響について

今回の作業ミスにより,ステムをコラムに固定する上下2つのボルトのうち,上側のボルトは下側よりも若干多く締めこんでいた可能性があります。

ステムの下部はがっちりとコラムを掴んでいますが,上部は写真とおり,少ししかコラムを掴んでいないからです。

となると,ステムの下側と上側の締め込み量が異なるので,ボルトに斜めの応力が働き,これが破断につながった可能性はあるのではないか。

この点についても,前回登場のT君に聞いてみました。

その結果,

一般的に,ボルトは横方向の剪断応力には弱いので注意が必要なのは確かで注意を要します。でも,今回の例では,上下の締め込み量の違いに起因する斜め方向のズレは,ほんの僅かですので,破断に至るほど大きな影響は与えないのでは?

とのことでした。

ほっ。

まぁ,アヘッドなら,これが普通の取り付け方なんだから,問題ありだったら大問題ですもんね(^^)

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コメント

  1. 名前:Shiro 投稿日:2012/09/18(火) 20:35:32 ID:c1ad268e3 返信

    >o.kさん

    ん? 細かいことはよく分からない(^^;)のですが,
    1Nの力で,1m先でグイグイ回す回転力のようですよ。
    ニュートン・メーターと。

    正式には,「Nm」ではなく,「N・m」ですね。

    (外人さんは,この「・」をどうやって書くのだろう・・・?)

    なので,今回の破断ボルトは,
    8N・mの最大トルクのところ,6N・mでお亡くになりになりました・・・。

  2. 名前:o.k 投稿日:2012/09/18(火) 17:15:44 ID:b766ec1e8 返信

    こんにちは

    あれ、4Nmって、4ニュートンですか?
    40ニュートン(旧4キロ)ではなくて

  3. 名前:Shiro 投稿日:2012/09/16(日) 11:43:48 ID:6657239ce 返信

    >o.kさん

    おひさしぶりです!

    たしかに,このボルトの細さですから,
    MAX 8Nmというのはかなり高い気がしますよね。

    ちなみに,買い換えたステムが昨日到着(Easton EA90)したのですが,
    こちらもM5サイズですが,MAX 5Nmでした。

    で,おいらも,そんなに強く締め付ける必要性を感じないので,
    4Nmで固定しています。

    どなたかのコメントにも書いたのですが,
    最大トルクは「これ以上締め付けちゃダメよ」でしょうから,
    そうじゃなくて,推奨の締め付けトルクを示して欲しいですよね。

    ネットで改めて探してみると,
    3~5Nmくらいで固定している方もたくさんいる事が分かりました。
    なにも,最大トルクまで締め上げる必要はなさそうですよね。

    (しかも,そのはるか手前で破断しているし・・・)

  4. 名前:o.k 投稿日:2012/09/15(土) 17:59:50 ID:53c75b531 返信

    おひさしぶりです、okです。
    材料工学さんがいらっしゃるようなので、若いころは自動車のエンジンを下ろし、今もオートバイの整備は自分の、しろうと整備が趣味の私が個人的興味で聞いてみたいことがあります。
    私はトルクレンチもトルクドライバも使いますが、アルミのステムにM5のビスで70Nってどうなんでしょうか?
    これだけ太さのある割り絞めだと20Nも絞めれば十分ではないでしょうか??
    今のオートバイにSP忠男管をつけたとき、ステップベースを車体に固定するM8ボルトの指定トルクが25Nでした。

  5. 名前:Shiro 投稿日:2012/09/11(火) 22:40:01 ID:3a03d9271 返信

    >通りすがりさん

    こんばんは~

    生意気だなんてとんでもない!

    おいらも薄々疑問に思っていた(コラム側ボルトの破断)ところですから,
    ありがたいコメントです。

    ほぼ無知だった5年前にスポーツバイクをはじめ,
    いろんな方からコメントをいただきながら,少しずつ成長しているところですから(^^)

    それにしても,自転車関係のメンテナンス本はたくさんありますが,
    この辺のことについて,真面目に書かれたものは皆無な気がするのですが,
    残念な気がします。

    せいぜい,ステムのハンドル側のボルト(普通は4本)を,
    斜めに交互に締めなさい,くらいしか見たことがありません。

    仮締め,本締めのような話も見かけないし,
    ボルトの再使用の話も・・・。

    速く走るより,生きて帰ってくるほうが大事ですし。
    素人のメンテ不良による事故も起きているのではないか,と不安になりますね。
    おいらは,幸いにも未遂で終わりましたが・・・(^^;

    これからも,「おかしいぞ?」と思うところがあったら,
    ビシバシ指摘してください!(^^)

  6. 名前:Shiro 投稿日:2012/09/11(火) 22:30:11 ID:3a03d9271 返信

    >_toshiさん

    本当,お安い授業料だったと思います!

    なんせ,走行中に破断したら確実に事故直結ですよね。

    ハンドル・ボルト・ステム関係の知識も少し増えましたが,
    何よりも,「セルフメンテはもう少し真面目にやらないと危険」
    という気がしてきました。

    痛い思いをするのは自分ですが,
    自分に頼っている人たちもいることを忘れないように(^^)

  7. 名前:Shiro 投稿日:2012/09/11(火) 22:20:38 ID:3a03d9271 返信

    >Ezさん

    こんばんは~

    おぉぉぉ,EC90ですか。
    今回,ステムを新調したのですが,EC90(ステムの方ですが)で悩みました。
    結局,EA90にしちゃいましたが・・・。

    本文中では,アヘッドなら1~2mmへこんでいるのでは,
    と書いてしまいましたが,
    よく考えたら,HEAD FITと同じように,
    ステムの上側にスペーサーを5mm~1cmくらい入れればいいんですよね。

    玉アタリとかの問題もあるのかもしれませんが,
    ステムでがっちりとコラムを把持するには,
    この方法の方がいいですよね。

  8. 名前:通りすがり 投稿日:2012/09/11(火) 13:37:02 ID:cb17c2e5d 返信

    こんにちは。なんだか生意気言ってすみませんでした。
    恐ろしい事に私は元工学部(それも材料学科)。
    ネジ切りはもちろん、いくらでも回るネジやトルクの上がらないネジ
    (多くは組みミスでパーツ側が塑性変形)を大量生産していました。
    (基本的に不器用な人間は実験機材を手作りする分野に向かないと実感)

    >かれこれ10回以上も,ボルト・ワッシャを再利用し続けていた
    さすがにこれは致命的に大きいですね。
    かつてお金のなかった時代は、均等な締め方はもちろん、仮組み→本組→増し締めとなじみor不良排除をしていたわけですがそれでも防げたかどうか。
    (塑性変形ネジは器用な人でなく私のような人間が考えたと信じてます。)

    追記
    手順を踏めば事故?が無いワケではないです。
    スパナも握らない相方(恐ろしい事にこちらも材料系)が、
    何度念を入れても増し締め前の車体を壊しまくってくれます。
    知り合いの機械系が恐ろしいほど事故防止理論系なのがわかるような気がします。

  9. 名前:_toshi 投稿日:2012/09/11(火) 09:26:59 ID:8baa421ea 返信

    Shiroさん:

    ハンドル廻りの不具合は事故に直結なので、とりあえずは無事で何よりでしたね。

    でもこれでまた1つ理解が深まったと思えば高くは無い?

  10. 名前:Ez 投稿日:2012/09/11(火) 04:37:49 ID:402ad3652 返信

    Eastonのカーボンフォーク(EC90コラムもカーボン)でも、トップには(ステムキャップの下)1cmのスペーサーを入れるようにマニュアルに書いてあります。
    割れやすくなるとか何らかの理由があるのでしょうね。

  11. 名前:Shiro 投稿日:2012/09/10(月) 23:41:22 ID:da68e64fd 返信

    >通りすがりさん

    そうですねぇ,なんとも素人なので分かりかねるのですが,
    おいらも,もともと,コラム側の応力って,
    そんなにバカでかい気がしないのです。

    Dedaの破断記事の多くは,みんなハンドルバー側(のキャップ)なんですよね。
    コラム側の破断って聞かないですよね。

    ただ,作業中(締め付け)のコラム側ボルト破断は,Dedaに限らず,
    特に3Tなんかでは多いみたいですが・・・。

    今回の作業ミスが起因するコラムの不足分は,ステム上面からわずか2mmくらいですから,
    一般的なアヘッドだと,普通な気がします。
    (というか,もっと凹んでいることもあるかも)

    また,破断したボルトも,
    緩んでいた(=軸力不足。疲労の原因になる)わけではないので,
    応力変動が極端に大きくはなっていなかったか,と思っています。

    作業前に見たところでは,締め切った状態(トルク6N・m)でも,
    まだステムの締め付け部の左右の隙間は1mmくらいありましたので,
    締め切ったにも関わらずコラムを掴みきれていなかった,
    というほどではなさそうです。

    やはり,今回の破断事件は,
    かれこれ10回以上も,ボルト・ワッシャを再利用し続けていた,
    というのが一番大きいのでは,と思います。
    ワッシャにいたっては,かなり変形していて,コレを毎回適当な向きで使っていたということは,
    作業のたびに,違う偏差をボルトに与えていたことになります。

    なので,本当はDedaのせいでもなんでもなく,おいらの貧乏性が原因かなと・・・(^^;
    (ただ,ハンドルバー側の破断記事が多すぎるので,Dedaはちょっと敬遠かな・・・)

    おいらも気になって,材料力学の本を立ち読みしてみたのですが,
    ボルト(ワッシャも)の再利用はNGとのことでした。

    ま,再利用にしても,作業ミスにしても,命に関わるステアリング周り。
    もっともっと,まじめに作業やらなきゃいけないですね。

  12. 名前:Shiro 投稿日:2012/09/10(月) 23:25:52 ID:da68e64fd 返信

    >ケンゾーサンさん

    こんばんは。

    アホみたいなミスですね。
    我ながらいやになります。

    もともと,2mmくらい出っ張っているのですが,
    逆に,2mmくらいへこんでしまっていました。

    ステアリング関係は,命にかかわりそうですから,
    今後はもっとまじめに作業することを肝に銘じています。
    安い授業料でした(約1.5万円)

  13. 名前:通りすがり 投稿日:2012/09/10(月) 23:11:09 ID:b4040cbda 返信

    本当にわずかなのでしょうか?
    素人考えだと、該当ネジの応力変動はノーマルに比べてかなり大きくなる事が予想されます。
    正直コラム側が金属疲労で破断した話は初めて聞くので疑心暗鬼になっています。

    追記
    もしこれが原因の場合2本→3本でも根本的な解決になりませんね。

  14. 名前:ケンゾーサン 投稿日:2012/09/10(月) 22:54:31 ID:ecea6946b 返信

     どんなポカミスをされたのか楽しみにしてましたが……ホントにポカミスですね、しかも一ヶ月走ってらしたとはw

     まあ、大事故に繋がらずによかったですね。 そうそうな事じゃあ、事故に繋がらないとわ思いますが、要注意ですね。

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