近藤史恵 『スティグマータ』

スティグマータ

全ロードバイク乗り必読の書、近藤史恵の「サクリファイス」シリーズの5作目の最新刊。

ロードレースという、究極の肉体競技でありながら、小さな社会を維持しながら走る、人間臭い不思議なスポーツを、毎回、良く表しています。

2016年6月発売なのに、世間様からだいぶ周回遅れで、ようやく読み終わりです(^^;



シリーズ5作目、『スティグマータ』

スティグマータは、2007年の『サクリファイス』から始まるシリーズ5作目。

  1. サクリファイス(2007年8月)
  2. エデン(2010年3月)
  3. サヴァイブ(2011年6月)
  4. キアズマ(2013年4月)
  5. スティグマータ(2016年6月)

だんだんとタイトルが難しくなってきている気がしますが(?)、スティグマータ(stigmata)とは「聖痕」(十字架に磔にされた際のイエス・キリストと同じ傷跡)とのこと。

う~む、なんとなく意味深い・・・。

で、本作『スティグマータ』では、シリーズの主人公、白石誓(地下チカ)が帰ってきます。

前作『キアズマ』が、シリーズのストーリーとは関係ないお話だったので、5年ぶりのチカ登場です(^^)

過去にツールで輝かしい戦歴を築きながらも、ドーピングによってすべてを失った選手(どう考えても、あの人ですが)がツールに戻ってくるところから話が始まります。

この選手(メネンコ)がどういう選手で、何のためにレースに戻ってきたのか。

メネンコに強い恨みを持つほかの選手(アルギ)との関係は・・・。

などなどの謎ときという仕掛けもありますが、やはり、本シリーズの面白さは、地価チカの内省的・冷静な性格が、ストーリー全体に通奏低音のように流れていることにあるのではないかと思います。

謎解きも、悩みも無く、ただ喜んで走るおじさん(CPFです)

謎解きも、悩みも無く、ただ喜んで走るおじさん(CPFです)

SONY α7II + FE 70-300mm F4.5-5.6 G

エースのアシストに徹し、決して熱くならず、30となった自分を冷静に分析し、そして、来年の契約を憂う。

勝つために走っているのだけど、同時に、負けるためにも走っている、ロードレースの複雑さ。

今回、一番ハラハラするのは、物語の終盤。

猛烈なスピードで峠を下る走るチカの描写がドキドキハラハラです。

・・・だが、下りでクラッシュしたことは数えるほどしかない。危険に見えるのは外からで、ぼくにはちゃんと限界が見えている。それともこれもただの妄想に過ぎず、薄氷の上を渡っているのと同じなのだろうか。

 集団はすでに、僕の後ろに遠ざかっている。いや、彼らが遠ざかったのではなく、ぼくが速度を上げているということはわかっている。だが、まるでぼくは止まっていて、世界が動いているような錯覚にとらわれる。

~ 中略 ~

 僕が勝てるものがあるとすれば、なにもかも捨ててもいいという気持ちくらいだ。守るものもないし、失うものもない。冷静になれば、恐怖を感じるのだとしても、今はなにかが麻痺している。

~ 中略 ~

 「チカ、無理をするな!」

 「大丈夫だ。ラインはちゃんと見えている」

 美しい一本の線だ。

近藤史恵 『スティグマータ』 p.301

そして、ラスト1km。

先頭を走るチカと、すぐ後ろに付けるチームのエース(二コラ)の、このやり取りに号泣。

ラスト1キロ。フラム・ルージュを越えた。

~中略~

 「チカ! きみが行け!」

 二コラがそう叫んだ。ラスト数百メートル。僕が先に飛び込めば、ツールのステージ優勝が手に入る。多くの選手が手に入れようとしても、手に入れられないものが。

 ぼくは息を吐いた。

 「ダメだ。きみが行くんだ」

近藤史恵 『スティグマータ』 p.302

5作目となっても、ロードレースと言う、この複雑な小世界の面白さは続いています。

感想文を書くのには時間がかかってしまいましたが、実際に読んだのは5日ほど。

読み始めると、あっという間に引き込まれ、スリップストリームに入って一瞬で読み終わってしまうのが残念。

なんだかんだ言って、チカも来年の契約とれていたし、早く次回作が出ないかなぁ~(^^)

おしまい。

おまけ(サクリファイスシリーズ・ミニDB)

5作も読んでいると、だんだん、どれ読んだんだか分からなくなりそうです(というか、なってます)

そこで、BOOKデータベースをコピって、ミニデータベース化しておきました。

これで6作目が出ても安心だ(^^)

回数 タイトル 発行年 BOOKデータベースでの紹介文(手抜き)
1作目 サクリファイス 2007年8月 ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと―。
陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。
そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。
アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。
かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた!
2作目 エデン 2010年3月

あれから三年―。

白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。

しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。

競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。

そして、友情が新たな惨劇を招く…。

目指すゴールは「楽園」なのか?前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ。

3作目 サヴァイブ 2011年6月

団体戦略が勝敗を決する自転車ロードレースにおいて、協調性ゼロの天才ルーキー石尾。

ベテラン赤城は彼の才能に嫉妬しながらも、一度は諦めたヨーロッパ進出の夢を彼に託した。

その時、石尾が漕ぎ出した前代未聞の戦略とは―(「プロトンの中の孤独」)。

エースの孤独、アシストの犠牲、ドーピングと故障への恐怖。

『サクリファイス』シリーズに秘められた感涙必至の全六編。

4作目 キアズマ 2013年4月

ふとしたきっかけでメンバー不足の自転車部に入部した正樹。

たちまちロードレースの楽しさに目覚め、頭角を現す。

しかし、チームの勝利を意識しはじめ、エース櫻井と衝突、中学時代の辛い記憶が蘇る。

二度と誰かを傷つけるスポーツはしたくなかったのに―走る喜びに突き動かされ、祈りをペダルにこめる。

自分のため、そして、助けられなかったアイツのために。

感動の青春長編。

5作目 スティグマータ 2016年6月

得体の知れない過去の幻影が、ペダルを踏む足をさらう。

それでもぼくたちはツールを走る。

すべてを賭けて! 黒い噂が絶えない、堕ちたカリスマの復活。

選手やファンに動揺が広がる中、今年も世界最高の舞台(ツール・ド・フランス)が幕を開ける。

かつての英雄の真の目的、選手をつけ狙う影、不穏なレースの行方――。

それでもぼくの手は、ハンドルを離さない。

チカと伊庭がツールを走る!新たな興奮と感動を呼び起こす、「サクリファイス」シリーズ最新長編。

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何作読んでも面白いなぁ・・・。早く6作目を!(^^)

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