この本は図書館で借りてきました。
正直言って,そんなに期待していませんでした。図書館にある自転車関係の本をあらかた読み終えたので,「あと,これしかないけど読んでおくか。タダだし」程度のつもりで借りてきて読み始めました。
その結果は・・・?
猛烈に面白かった! とにかく面白かった,の一言です。
去年の夏頃から急に自転車バカになり始め,数10冊本を読んできましたが,一番面白い本でした。
この本は,ツール・ド・フランス100年の歴史を,100話ほどの短編で綴った本です。
1903年の第1回から,毎年1話ずつ,優勝者やアシスト,不幸にもリタイアした選手,ボイコットした選手,カフェで酒を飲んで熟睡してしまった選手など,様々な選手達にまつわるエピソードが書かれています。
ほぼ100話全部が面白いのですが,特に前半50話くらいは本当に面白い。現代のシビアな自転車レースからは考えられないような事件・事故・ハプニングが毎年のように起きていたようで,それをユーモアたっぷりで描かれています。
例えば,
- 最初の数回のレースでは,近道をしたり,車につかまって走ったりする不正行為が多発。中には電車に乗って先回りした(!)強者までいた。
- 2位以下に1時間以上もの差を付けてしまったトップ選手が,沿道のカフェでのんびりとワインを飲んで休憩していた。ところがゆっくりしすぎて,2位グループに抜かれてしまう。しかし,カフェから出てきて,猛烈に追い上げて優勝してしまう(すごすぎ!)
- 貴族が家来(?)を引き連れて参加。ずっと引っ張って貰いつつ,途中リタイア。
- 自転車レースに反対する狂信者達による数々の妨害行為。コースに画鋲をまく,毒入りドリンクを差し入れる・・・。
- ママチャリでゴール。途中で自分の自転車が大破。やむを得ず,観客のママチャリを借りて激走!
などなど・・。あまりにものんびりした(妨害の方は怖いけど)レースぶりに驚いてしまいました。
また,ある意味,今もそういう傾向がありますが,レース主催者達が決めるルールが奇抜で驚かされます。
- 1ステージが500kmもある。な,長すぎです・・・。おかげで,トップと最下位のタイム差は64時間・・・。
- スタートが深夜0時。なんせ距離がべらぼうに長いので,昼間にゴールするには夜に出発しないと。
- アシスト無し。つまり,いつも一人で全部の風を受けて走る。しかも500km。
- 変速機禁止。当時,すでにあったのに,「スポーツマンシップに反する」とか言って禁止。変速無しで2000m級の山を登ります。すんご~
- 修理はセルフサービス。壊れた全部自分で直す。パンク修理もスポーク修理も。タイヤを背中に背負って走る選手も多かった・・・。
- 宿探しもセルフサービス。ゴールしてから自分で宿を探す。見つからなければ野宿する。もはや罰ゲームのような気がする・・・。
「よくもまぁ,こんな無慈悲なルールにしたがってがんばれるなぁ」と思うと,やっぱり腹が立って,「やってられっか!」とストしちゃう選手もいたようです。
こんなお話が100話。最後の方にはちゃんとアームストロングが登場しておしまい。
ツール・ド・フランスが巨大スポーツイベントになっていく過程もよく分かりますし,また,自転車競技がどのように変遷してきたかも分かります。
そして何より,この100年,選手達がどれだけ多くの喜びをかみしめ,涙を流してきたのか。その人間模様が本当に面白い。
オススメの1冊です。(図書館の本で,おいらは持ってないけど・・・)